深海6000mの暗闇に潜む「未知の巨大生物」はいるのか
地球の海の8割以上はいまだ未探査とされる。深海には、私たちが想像する以上の巨大生物が潜んでいる可能性があるのだろうか。
人類はまだ、自分たちの星の海を知らない
宇宙探査の話題には事欠かない時代でも、地球の深海についてはほとんど何も分かっていないといっても過言ではない。現在、海洋全体のうち人類が詳しく調査できているのは全体の2割にも満たないとされており、残りは文字通りの「暗闇」だ。水深200メートルを超えると太陽光は届かなくなり、それより深い「深海帯」では水圧は陸上の数百倍から数千倍に達する。そんな場所に、どんな生き物が息をひそめているのか。
ダイオウイカが教えてくれた「発見の余地」
長い間、深海の巨大生物はほとんど「伝説」の領域にあった。その象徴ともいえるのがダイオウイカだ。かつては船を襲うという北欧の海の怪物「クラーケン」の正体とも噂されていたが、20世紀以降になって死骸や胃の内容物から実在が確認された。生きたままの姿が初めて映像に収められたのは2000年代に入ってからのこと。全長10メートルを超えるとされるこの生物が、長年「未確認」のままだったという事実は重い。深海の調査がいかに困難かを物語っている。
さらに近年の研究では、深海魚の中にも既知のものをはるかに超えるサイズの個体が存在する可能性が示唆されており、音響調査では正体不明の低周波音が記録されることもある。1997年にアメリカ海洋大気庁の水中マイクが拾った「ブループ」と呼ばれる謎の音は当初巨大生物の発する音ではないかと話題になり、後に氷山の崩壊音と結論づけられたが、あの騒動は深海への人々の想像力がいかに刺激されやすいかを示している。
「いないと証明できない」という科学の正直さ
現時点で、深海に未発見の大型生物が存在するかどうかを「ない」と断言できる根拠はない。これは荒唐無稽な話ではなく、科学的に誠実な態度だ。深海探査に使われる無人潜水機の累積潜行時間は、広大な海の底に比べればごく限られた点と点にすぎない。仮に体長15メートルを超えるような未知の生物がいたとしても、まだ人類の観測網にかかっていないとしても不思議ではない、という研究者も存在する。
ダイオウイカが「実在しない生物」から「実在する生物」へとカテゴリが移ったように、深海はいまも私たちの認識を塗り替える可能性を秘めている。次の「発見」が何をもたらすのか、それは誰にも分からない。深海はいまも、静かに問いかけ続けている。