深海に潜む巨大触手——「ダイオウイカ」を超える何かの正体
深海カメラが捉えた20メートルを超えるとされる巨大な触手状の映像。それは既知の生物か、それとも未発見の何かなのか。
深海カメラが捉えた「腕」
深海探査機や海底ケーブルの点検カメラは、人間の目が届かない場所を静かに記録し続けている。そうした映像の中に、ときおり説明のつかないものが映り込む。近年、水深数百メートル以深で撮影されたとされる映像の中に、直径数十センチ、長さ20メートルを超えるとも言われる触手状の物体が確認されたという報告が注目を集めている。
その映像自体の詳細な出所や撮影条件は、現時点では公式に検証されたわけではない。しかし、深海に未知の大型生物が存在する可能性については、生物学者たちも否定しきれていないのが実情だ。
ダイオウイカという「前例」が意味すること
2004年、日本の研究チームが世界で初めてダイオウイカの生きた姿を深海カメラで撮影することに成功した。それまでダイオウイカは座礁した死骸や、マッコウクジラの胃の中から発見された吸盤の痕跡によってのみ、その存在が推測されてきた生き物だった。全長は最大で13〜15メートルに達するとされ、長年「海の怪物」伝説の源泉の一つとも考えられてきた。
重要なのは、この生物が「実在しないもの」として長く扱われていたわけではないが、生きた状態で映像に収められるまでには約半世紀以上の時間がかかったという事実だ。深海は地球上で最も調査が遅れている環境であり、現在確認されている生物はその全体のごく一部にすぎないと研究者たちは指摘する。
今回報告された「20メートル超の触手」が事実であれば、それはダイオウイカをはるかに上回るサイズになる。既知種の個体差なのか、まったく別の未記載種なのか、あるいは映像の解釈そのものに誤りがあるのか——現段階では何も断言できない。
「見えていない」ことと「存在しない」ことは違う
深海の調査範囲は、地球の海洋全体のわずか数パーセントにも満たないとも言われる。残りの領域には、まだ名前すら付けられていない生物が息をひそめている可能性がある。巨大な触手の映像が本物かどうかという問いと同じくらい、「なぜ私たちはそれを見たことがないのか」という問いも考える価値がある。
深海は暗く、圧力は凄まじく、探査コストは膨大だ。人類が「存在しない」と言えるのは、十分に探し終えた後の話である。あの映像の触手が何であれ、深海はまだ多くの秘密を手放していない。