AIとドローンが砂漠に眠る「首なし人物像」を発見した日
2,000年以上沈黙を守っていたナスカの砂漠で、AIとドローンの協働調査が303体もの未知の地上絵を発見。その中に「首を抱えた人物像」という異様な図像があった。
砂漠が隠し続けた「もう一つの世界」
ペルー南部に広がるナスカの台地は、乾燥した風がほとんど雨を遮り、描かれたものが何千年も消えずに残る。この特異な環境のおかげで、20世紀初頭に地上絵が「発見」されたとき、世界は驚愕した。だが本当の驚きは、ずっと後になってやってくることになる。
2022年から本格化した日秘共同研究チームによる調査では、AIによる航空写真の自動解析とドローンによる低空撮影を組み合わせた手法が取られた。従来、研究者が肉眼や人力で確認してきた作業を、機械学習モデルが膨大な画像データの中から「それらしきパターン」を検出し、専門家が精査するというプロセスだ。その結果として報告されたのが、303体という数字だった。
「首を抱えた人物」が意味するもの
新たに確認された図像の多くは、既知の巨大な動物絵とは異なり、数メートル規模の小型のものが中心だという。リャマや魚のような動物に混じって、研究者たちが注目したのが「自分の首を抱えるように見える人物像」だ。
この図像が何を表しているのか、現時点では確かなことは分かっていない。古代ナスカ文化における儀礼的な首狩りの慣習を示す可能性を指摘する声もある。実際、ナスカ文化の遺跡からは頭部のみが切り離された形跡のある人骨が発見されており、「首」が特別な宗教的・象徴的意味を持っていたと考えられている。しかし、地上絵がその慣習を直接描いたものかどうかは、慎重に検討すべき問題だ。
ナイフを持ったシャチの図像も確認されたとされる。シャチはナスカの土器にも繰り返し登場するモチーフであり、単なる動物の写生ではなく、何らかの神話的存在を描いている可能性が高い。
「発見」は終わらない
ナスカの地上絵は1994年にユネスコの世界遺産に登録されているが、調査対象の全域がくまなく確認されたわけではなかった。今回の成果が示すのは、「調査済み」とされていた場所にも、人間の目が見落としていたものが潜んでいたという事実だ。
AIは何かを「理解」しているわけではない。ただ、人間が見過ごすパターンを見つける点で、圧倒的な処理能力を持つ。この技術の組み合わせが今後さらに精度を上げれば、303体という数字もまた途中経過に過ぎないことになる。
砂漠の上に描かれた無数の図像は、誰かに見せるために作られたのか、あるいは見せるためではなく、ただ祈るために刻まれたのか。2,000年前の人々が何を考えていたか、AIはまだ教えてくれない。