ナスカの地上絵、303点新発見が変えた「目的論」
山形大学の研究チームがAIを活用し、ナスカ台地で303点もの地上絵を新たに特定。長年の謎だった「なぜ描かれたか」に、ひとつの答えが見えてきた。
半世紀で積み上げた発見数を、AIが一気に塗り替えた
ペルー南部の乾燥した台地に刻まれたナスカの地上絵は、20世紀初頭に「発見」されて以来、考古学者たちを魅了し続けてきた。長年の地道な調査によって積み上げられた確認数は、2010年代までに数百点ほど。それを大きく塗り替えたのが、山形大学の研究チームだ。
2024年に発表された調査成果では、AIによる画像解析と現地調査を組み合わせることで、新たに303点もの地上絵が特定されたという。これは従来の発見ペースからすれば、驚異的なスピードといえる。新たに確認された絵の多くは、これまで主流だった大型の動物・植物モチーフとは異なり、人間に近い形や比較的小さなサイズのものが中心だったとされる。
「見せるため」から「使うため」へ、目的論の転換
ナスカの地上絵をめぐる最大の謎は「何のために描いたのか」という問いだ。宇宙人との交信説、暦や天文図説、降水儀礼説——さまざまな仮説が提唱されてきたが、どれも決定打を欠いていた。
今回の大規模調査が浮かび上がらせたのは、地上絵の「場所」と「種類」の関係だ。大型で複雑な幾何学模様や動物の絵は、巡礼路や儀式のルート沿いに配置されている一方、小型の人物・道具を模した絵は居住域に近い場所に集中する傾向があるという。研究チームはこれを踏まえ、大型の絵が「儀礼の場を示す標識」として、小型の絵が「日常的な祈りや願掛けのための私的なもの」として機能していた可能性を指摘している。つまり、ひとつの「目的」があったのではなく、用途によって描かれ方が異なっていたという見方だ。
まだ見えていないナスカの輪郭
もっとも、これはあくまで現時点での有力な仮説にすぎない。地上絵がいつ、誰の手によって、どれほどの時間をかけて描かれたのかは、まだ多くの部分が霧の中にある。303点という数字も、今後の技術向上によってさらに更新される可能性が高い。
AIという現代の道具が、乾いた大地に残された古代人の痕跡を次々と照らし出している。だが「なぜ」という問いの核心は、数が増えるほどにむしろ複雑さを増すようにも思える。数千年前の人々が台地に向けた思いを、私たちはどこまで理解できるのだろうか。