200kmを越えた巨石——エーヴベリーが問いかける先史人類の意志
ストーンヘンジより16倍広い環状遺跡エーヴベリー。現代技術でもようやく動かせる巨石を、なぜ先史人類は運び、並べたのか。
「大きすぎる」遺跡が英国の丘に存在する
イングランド南西部の丘陵地帯に、ストーンヘンジよりもはるかに広大な環状遺跡が静かに存在している。エーヴベリー(Avebury)と呼ばれるその遺跡は、面積にしてストーンヘンジの約16倍とされる。村ごと遺跡に取り込まれているような規模で、住民が今も生活を営む傍らに、高さ数メートルを超える巨石がただ並んでいる。1986年、ストーンヘンジとともにユネスコ世界遺産に登録されたが、観光客の数では圧倒的に影に隠れる存在だ。
現代のクレーンでも扱いに苦慮する石を、彼らはどう動かしたのか
ストーンヘンジを構成する石のうち、「青石」と総称される一群はウェールズ南西部のプレセリ丘陵から運ばれたとされている。直線距離でおよそ200キロメートル。重さは最大で40トン近いものもあり、現代の建設機械をもってしても慎重な作業が求められる重量だという。先史時代——文字も車輪の記録も定かでない時代——に、これをどう運んだのかは今も確証がない。筏と川を使ったとする説、大勢の人力で陸路を引いたとする説、あるいはその組み合わせなど、複数の仮説が今も議論されている。
エーヴベリーでも状況は変わらない。環状列石を形成するサーセン石は近隣産とされるが、それでも個々の石は数十トン級のものを含む。なぜこれほどの労力を注いだのか——祭祀のためか、暦のためか、あるいは権力の誇示か——決定的な答えはいまだ出ていない。
「並べた理由」が分からないという事実
遺跡の「作り方」への問いよりも、実は深い謎がある。それは「なぜ並べたのか」という問いだ。ストーンヘンジは夏至の日の出と冬至の日没が特定の石の方向と一致することが知られており、天文的な機能を持つとする見方は有力だ。しかし、それがすべての説明にはなりえない。エーヴベリーの巨大な環状構造が何を意味し、どんな儀式や集会が行われたのか、記録は何も残っていない。
文字を持たなかった人々の「意図」を、私たちは石の配置からしか読むことができない。数千年の風雨に耐えた巨石が今も丘に立ち続けるのは、何かを伝えようとした意志の痕跡なのか、それとも単なる偶然の生き残りなのか。エーヴベリーの石は、問いに答えることなく、ただそこに立っている。