AIが半年で303点を発見——ナスカの地上絵は「地図」だったのか
山形大学の研究チームがAIと航空写真を組み合わせ、わずか半年で303点の新たなナスカの地上絵を発見。その配置が示す意外な仮説とは。
「こんなにあるとは思っていなかった」
南米ペルーのナスカ台地に刻まれた巨大な地上絵は、20世紀に航空機から発見されて以来、世界で最も有名な「謎」のひとつであり続けている。宇宙人の滑走路説、宗教儀式の跡説、水脈を示す地図説——さまざまな仮説が唱えられてきたが、いずれも決め手を欠いたまま時代を超えてきた。
その膠着した状況を動かしたのが、山形大学の研究チームだ。坂井正人教授を中心とするグループは20年以上にわたりナスカの現地調査を続け、これまでにも300点超の地上絵を発見してきた実績を持つ。そして2024年、ナスカ台地の全域を撮影した高解像度の航空写真をもとに、学習精度を大幅に向上させたAIで候補地を絞り込む新手法を導入した。結果は研究チーム自身が驚くほどのものだった——わずか半年で303点の新たな地上絵が確認されたのである。
「絵の組み合わせ」が語るもの
今回発見された地上絵には、頭部に飾りを持つ人型のものや、動物をかたどったものが含まれている。幅がおよそ5メートル程度と小ぶりなものも多く、上空から肉眼で確認するには条件が整わなければ見落としやすい大きさだという。こうした小規模な絵がこれほどの密度で存在していたという事実は、ナスカ台地の「使われ方」についての従来のイメージを根本から見直すきっかけになり得る。
坂井教授が注目するのは、個々の絵の形そのものよりも「配置と組み合わせ」だ。台地のどこに、どの種類の絵が、どのような順序で描かれているか——その全体像を把握することで、絵全体が一種の「情報体系」として機能していた可能性が見えてきた。集落間の境界を示していたのか、季節や儀礼の日程を記録していたのか、あるいは集団のアイデンティティを可視化したものなのか。現時点では確証はなく、解析はこれからが本番だという。
500点という次の予測が示す地平
研究チームは今後さらに500点近くの地上絵が新たに見つかると予測している。AIの学習が進めば進むほど、これまで見過ごされてきた痕跡が浮かび上がってくる。古代人が残したメッセージの受け手として、現代の機械が機能し始めているともいえる。
2000年前の人々がなぜこれほど広大な台地に、これほど多くの絵を刻み続けたのか。その問いへの答えは、まだ地面の中に眠っている。303点の発見は終着点ではなく、長い解読作業の入口に過ぎないのかもしれない。