黄金の仮面と飛び出た目——三星堆遺跡が問い直す「文明の起源」
四川省の内陸に眠っていた三星堆遺跡。黄金の仮面や異形の青銅像は、既知の中国文明史とは異なる「もう一つの古代世界」の存在を示唆している。
内陸の大地に眠っていた「異形の文明」
四川省の成都平野。山々に囲まれたこの内陸盆地で、3000年から5000年前とされる遺跡が発見されたのは20世紀のことだった。三星堆遺跡と名付けられたその場所からは、考古学者たちの想定をはるかに超えるものが次々と出土した。
中でも注目を集めるのが、純度の高い金箔で作られた「黄金仮面」と、眼球が数センチも前に突き出た造形の青銅製仮面だ。後者は「縦目仮面」とも呼ばれ、どこか人間離れした容貌を持つ。これらが祭祀に使われたものか、あるいは神や霊的存在を象ったものかは、いまだ確定していない。
黄河文明とも長江文明とも異なる「第三の顔」
中国の古代文明といえば、黄河流域や長江流域の文化が教科書に登場する。しかし三星堆から出土した遺物の造形は、それらとは明らかに一線を画している。目の表現、仮面の構造、青銅器の様式——いずれも既存の文明圏のスタイルとは一致しない部分が多い。
一方で、2019年から再開された第二次大規模発掘では、東部の青銅文化との交流を示唆する遺物も確認されているという。三星堆の人々は完全に孤立した存在ではなく、当時の「広域ネットワーク」に何らかの形で接続していた可能性がある。三星堆博物館の館長はこう語っている。「中華文明の起源と形成は多元的だが、最終的には一つになった」と。この言葉は、単なる政治的なまとめ方ではなく、考古学的な実態を反映しているのかもしれない。
発掘が続く限り、謎も増え続ける
2022年には発掘現場が外国メディアに公開され、国際的な関心が改めて高まった。四川省政府は世界遺産登録に向けた準備も進めているという。しかし、三星堆を築いた人々が何語を話し、どんな信仰を持ち、なぜその文明が突然姿を消したのか——その問いに答える文字記録は、今のところ見つかっていない。
発掘が進むたびに新たな遺物が姿を現し、解明されるよりも多くの疑問が生まれる。黄金の仮面に刻まれた「顔」は、誰のものだったのか。その目は何を見つめていたのか。大地の奥から届く問いかけは、まだ終わっていない。