ストーンヘンジ——4500年前の巨石が今も語りかける問い
イギリスの草原にそびえる巨石群・ストーンヘンジ。建設の目的も運搬の方法も、現代の研究者たちを今なお悩ませ続けている。
誰が、何のために積み上げたのか
イングランド南部・ソールズベリー平原に立つ石の環は、人類が文字をもつ以前から風雨にさらされてきた。最大で重さ約25トンにもなるサーセン石が同心円状に並ぶ、その光景は今も訪れる者を黙らせる。歴史家や考古学者による研究が100年以上積み重なってきたにもかかわらず、「なぜ造られたか」という根本の問いに対して、学界が一致した答えを出すには至っていない。
現在有力とされる説のひとつが、天文観測または暦に関わる施設だったというものだ。毎年夏至の朝、昇る太陽の光が石の配列に沿ってほぼ正確に差し込む現象が確認されている。農耕社会にとって季節の転換点を知ることは死活問題であり、石の配置に天体の動きが意図的に織り込まれた可能性は高い。一方で、周辺から発掘された人骨や副葬品の分析から、数百年にわたって使われ続けた埋葬の聖地だったという見方も根強い。祭祀・天文・埋葬、これらは互いを排除する概念ではなく、ひとつの場所が複数の意味をもって機能していたとも考えられる。
石はどこから来たのか
謎は「なぜ」だけではない。「どうやって」も同様に未解決に近い。遺跡を構成する石には二種類あり、外輪の巨大なサーセン石はおよそ30キロ北のマールバラ丘陵産と考えられている。しかし内側に配置されたブルーストーンは、現在のウェールズ南西部・プレセリ丘陵、直線距離にして約240キロもの遠方からもたらされたことが地質分析で示されている。車輪も鉄器もなかった時代に、なぜそれほど遠くの石が選ばれ、どう運ばれたのか——筏と人力によるルートが提唱されてはいるが、実証実験でも同規模の再現は容易ではない。氷河によって自然に運ばれた石を利用したという異説も存在するが、こちらも決め手に欠ける。
石が問い続けること
2014年、当時のアメリカ大統領がプライベートで遺跡を訪れ、思わず「クール」と声を上げたと伝えられたことが話題になった。世界屈指の権力者でさえ、4500年前の石の前では観光客と変わらない感嘆を漏らす——その場面は、ストーンヘンジが持つ不思議な引力を象徴している。近年のLiDARを用いた地中探査では、周辺の地下にさらなる遺構が埋もれている可能性が示唆されており、研究は現在進行形で続く。私たちが知っているのは、誰かがここに何かを込めようとしたという事実だけだ。その「何か」が何だったのかは、石だけが知っている。