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モスマン目撃談が今も語り継がれる理由——橋崩落の前夜に現れた影

アメリカ・ウェストバージニア州で1960年代に相次いだ「翼を持つ灰色の影」の目撃証言。その背後には、実際に起きた橋崩落事故という歴史的事実がある。

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赤い眼を持つ「それ」は、何者だったのか

胴体に頭部がなく、胸のあたりに赤い眼が二つ、ぎらりと光る。翼を広げると2メートルを超えるとも言われるその影は、地面を滑るように追いかけてくる——。

「モスマン」と呼ばれる存在の目撃談は、1960年代後半のアメリカ・ウェストバージニア州ポイントプレザント周辺で集中的に報告されたとされる。当時の地元紙にも証言が掲載され、複数の家族や夜間ドライブ中の男女が「奇妙な飛行生物に追われた」と訴えた記録が残っている。

「のろい」で済まされなかった理由

多くの怪異譚と異なり、モスマンの話が今も語り継がれるのには、ある歴史的事実が深く関わっている。

1967年12月、ポイントプレザントに架かるシルバーブリッジが突然崩落した。渋滞中の車ごと川へ落ちた犠牲者は46名に上り、アメリカの橋梁事故史に残る大惨事となった。調査の結果、崩落の原因は素材の金属疲労と判断されている。しかしその直前まで、橋の周辺でモスマンを「見た」という証言が相次いでいたことから、「モスマンは災害の前兆として現れる」という解釈が地域に広まった。

後に出版されたジャーナリストによる調査報告書がこの説を整理・紹介したことで、一地方の奇談はアメリカ全土で知られる存在へと変貌していった。

未確認生物か、集合的な恐怖か

モスマンの正体についての説は現在も定まっていない。大型のシロフクロウや鷺の見間違いとする自然科学的な見解がある一方、「災害の予兆として人間の意識が作り出した集団的な幻視」という心理学的な解釈も提示されている。

興味深いのは、橋崩落後に目撃証言がほぼ途絶えたとされていることだ。「使命を果たして去った」と語る人もいれば、「恐怖の対象が現実の災害に置き換えられたから」と分析する人もいる。どちらが正しいかは、今のところ誰にも分からない。

ポイントプレザントには現在、モスマンの像が建てられ、毎年記念フェスティバルが開催されているという。かつて住民を震え上がらせた「のろいの蛾人間」は、いつの間にか町のシンボルに収まっている。人間と怪異の関係もまた、時間とともに変化していくものなのかもしれない。

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