ナスカに「メディア」があった——山形大学が248点の地上絵を新発見
山形大学の研究グループがナスカの地上絵を新たに248点発見。単なる巨大アートではなく、信仰や記憶を伝える「メディア」だったとする新説が注目を集めている。
砂漠の地面に刻まれた、248の新たな問い
南米ペルーの乾燥した高原地帯。地上からではほとんど識別できない巨大な図形が、何千年ものあいだ静かにそこに刻まれてきた。ナスカの地上絵である。山形大学の研究グループは、AIを活用した画像解析と現地調査を組み合わせることで、これまで確認されていなかった248点の地上絵を新たに発見したと発表した。
ナスカの地上絵といえば、巨大なハチドリやサルの図形が有名だが、今回見つかったものの多くは比較的小型で、人や動物を模したものとみられるという。発見の積み重ねによって、この遺跡の「全体像」は少しずつ、しかし確実に塗り替えられつつある。
「芸術」ではなく「メディア」だったとしたら
研究を率いてきた坂井正人教授が提唱するのは、地上絵を一枚一枚の独立した芸術作品として見るのをやめるべきだ、という視点の転換だ。地上絵は単体で意味を持つのではなく、複数が組み合わさり、特定の配置を持つことで、当時の人々の信仰や共同の記憶を「伝達」する機能を果たしていたのではないか——教授はそう考えている。
この「メディア説」は、これまでの「宇宙人が作った」「神への供物だった」といった諸説とは一線を画す。地上絵を描いた人々が、自分たちの文化的な文脈の中で意図的に情報を編み上げていたとするなら、それは現代のわたしたちが看板や書物に情報を記すことと、本質的にはそれほど遠くない行為かもしれない。ただし、そのスケールと媒体が、砂漠の大地そのものだっただけで。
AIが拓く、解読の新しい地平
今後の課題は「発見」から「解読」へと移る。坂井教授はAIを活用して地上絵の配置や図像のパターンを分析し、絵と絵のあいだにある意味の連鎖を読み解く作業を進める方針を示している。
もっとも、言語のような明確な対応関係がない図像の「解読」は、容易ではない。描いた人々の思考体系や信仰の詳細は、文字記録をほとんど残さなかった文明ゆえに、直接たどる手がかりが乏しい。AIが膨大なパターンを処理できても、その意味を「正しく」解釈できるかどうかは、また別の問題だ。
何千年もの風雨に耐えて残ったこれらの図形は、いったい何を語りかけているのか。発見された248点の一つひとつが、その答えに近づく鍵かもしれない——あるいは、新たな問いを積み重ねるだけかもしれない。