👁️ 自然の謎・UMA

深海2000メートルに残された「謎の巨大痕跡」—未知の生物はいるのか

地球の海底の大半はいまだ未調査のまま。深海で記録された説明のつかない痕跡や音響異常が、研究者たちを長年悩ませている。

この記事の入り口になった動画

人類が「見ていない」海の広さ

地球の表面積の約70%を占める海。しかしその海底のうち、人類が詳細に調査できているのは全体の2割にも満たないとされる。宇宙の探査に比べ、深海調査がいかに困難であるかは、水圧・暗黒・低温という三重の障壁を考えれば想像に難くない。月面に人が降り立った後も、海底の大半は地図すら存在しない「空白地帯」のままだ。

その空白の中で、研究者たちをくり返し立ち止まらせてきた記録がある。生物由来とみられる痕跡や、正体不明の音響信号だ。

1997年、南太平洋で拾われた「声」

1997年、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の水中音響監視システムが、南太平洋の深海で異質な低周波音を捉えた。後に「ブループ(Bloop)」と呼ばれることになるその音は、数千キロメートル先まで伝わるほど強力で、既知のどの海洋生物のパターンとも一致しなかった。

当初、一部の研究者や海洋ファンの間で「正体不明の巨大生物の発した音ではないか」という議論が起きた。既知最大の動物であるシロナガスクジラでさえ、これほどの音域・強度を出すことはないとされたためだ。その後の調査で、NOAAは「南極大陸の氷塊が割れる際に生じる氷震(アイスクォーク)である可能性が高い」との見解を示した。科学的には現在この説が有力とされているが、完全な決着がついたわけでもなく、記録は今も海洋音響の教科書的な事例として語り継がれている。

痕跡が示す「サイズ」の問題

深海では、陸上では考えられないほどのサイズに達する生物が存在することが確かめられている。ダイオウイカはその代表例で、かつては「伝説上の怪物」として扱われていたが、今では実在が証明されている。全長10メートルを超える個体の痕跡が、マッコウクジラの胃の中から見つかったのはそう古い話ではない。

問題は、深海にはまだ発見されていない大型生物が存在し得るだけの「空間」と「生態的余地」が残っているという点だ。光が届かない深海では光合成に頼らない食物連鎖が成立しており、熱水噴出孔の周辺などでは独自の生態系が構築されている。未知の巨大生物がそこに潜んでいたとしても、現在の調査密度では見つけられない可能性は十分ある。

「分からない」ことを分かっていること

深海の謎は、「何かがいる」と断言するためのものではなく、「人類の知識がいかに限られているか」を示す鏡に近い。ブループの音一つとっても、最初の解釈が覆され、また別の検証が重ねられるというプロセスが続いている。科学は「謎を消費する」のではなく、「謎と向き合い続ける」営みだ。

地球上に、まだ誰も見たことのない生き物が存在しているかもしれない。その可能性を、深海はまだ静かに手放していない。

取材・出典

関連するストーリー