CIAが動いたナスカの地上絵——スターゲート計画が残した問い
冷戦期、CIAは超能力者を使ってナスカの地上絵を「透視」させていた。機密解除された文書が示す、国家と古代遺跡の奇妙な交点。
砂漠に刻まれた図形を、国家機関はなぜ追ったのか
ペルー南部の乾燥した台地に広がるナスカの地上絵は、何千年も前に描かれたとされる巨大な線刻群だ。ハチドリ、サル、クモ——上空からしか全容を認識できないその図形は、20世紀に航空写真で「発見」されて以来、研究者だけでなく軍や情報機関の関心をも引きつけてきた。なぜ国家がこの遺跡に注目したのか。その一端が、近年の機密文書解除によって少しずつ明らかになってきた。
1970年代から90年代にかけて、CIAは「スターゲート計画」と呼ばれる極秘プログラムを運用していたとされる。表向きには超能力——とりわけ「遠隔透視」と呼ばれる、離れた場所の情報を念で読み取る技術——の軍事応用を研究するものだった。機密解除された文書の一部には、ナスカ周辺の地形や地質に関連する調査項目が含まれていたとも伝えられており、単なる考古学的関心とは異なる目的が存在した可能性が指摘されている。ただし、文書の全容は現在も開示されておらず、何をどこまで調べたのかは確認できない。
AIが砂漠を「読む」——山形大学の新発見
一方、現代の研究は別のアプローチでナスカに迫っている。山形大学のチームは航空写真と機械学習を組み合わせ、これまで人の目では気づかれなかった地上絵を次々と「発見」してきた。発表された成果によれば、確認済みの地上絵の数は過去に比べて大幅に増加しており、小型で細部が複雑なものほどAIが得意とすることも分かってきた。興味深いのは、こうした高精度の空撮解析技術が、もともと軍事偵察衛星の画像処理技術と深く結びついている点だ。冷戦時代に国家機密として開発された技術が、半世紀を経て古代の謎を解く鍵になっている——その皮肉な逆転には、思わず立ち止まらされる。
地上絵の制作目的についても、定説はいまだ存在しない。天文カレンダー説、水脈を示す地図説、儀礼的な「歩く道」説など、研究者ごとに異なる仮説を唱えており、どれも決定的な証拠には欠ける。一部の論者は、古代文明が地球規模のエネルギー的・地理的なネットワークを意識して制作したと主張するが、これは学術的な主流からは外れた見解とされている。
分からないことが、この遺跡の本質かもしれない
ナスカの地上絵が不思議なのは、「見えているのに理解できない」という構造そのものにある。何千本もの線、何十もの動物の輪郭——それらが誰のために、何のために描かれたのかを、現代人はまだ説明できていない。CIAが超能力者を動員してまで調べようとした理由も、公式には明かされていない。AIが新たな図形を見つけるたびに、謎は解けるどころか増える一方だ。
砂漠の地面に刻まれた線は、風化にも時代にも耐えて残ってきた。私たちが持っている問いも、もしかしたらそれと同じくらい長持ちするのかもしれない。