🏛️ 歴史の謎

ナスカ台地で168点の地上絵が新たに姿を現した

山形大学の研究グループがドローンを駆使し、ナスカ台地で新たに168点の地上絵を発見。巨大な問いはまだ終わっていない。

この記事の入り口になった動画

砂漠の「余白」に、まだ絵は眠っていた

ナスカの地上絵といえば、教科書に載るハチドリやサルの巨大な線刻を思い浮かべる人が多いだろう。あの荒涼としたペルーの台地に、語り尽くされた謎が描かれている——そう思っていた人は少なくないはずだ。しかし2024年、その前提はあっさり覆された。山形大学の研究グループが、ナスカ台地とその周辺で新たに168点もの地上絵を確認したと発表したのである。

発見の鍵となったのは、ドローン技術と長年の現地調査の積み重ねだった。上空からの高解像度撮影によって、地表の微細な凹凸や色の差異が浮かび上がり、肉眼や従来の航空写真では見落とされてきた図形が次々と姿を現した。砂漠は何も隠していなかったのではない。人間の側に、まだ「見る目」が備わっていなかっただけなのかもしれない。

描かれたのは誰が、何のために

今回新たに見つかった地上絵の多くは、従来知られていたような巨大な動物の線画とは異なり、比較的小さなサイズのものが多いとされる。人間らしき形や、判別が難しい抽象的な図形も含まれているという。研究グループはこれらが描かれた目的や年代の解明を今後の課題として挙げており、現時点では確かなことは分かっていない。

ナスカの地上絵をめぐっては、古代の「暦」だという説、水源を示す地図だという説、儀式の場だという説など、さまざまな仮説が長年にわたって提唱されてきた。しかし定説と呼べるものはいまだ存在しない。168点という新発見は、その問いにさらなる複雑さを加えたことになる。

守ることと、読み解くことの両立

研究グループは発見の公表と同時に、地上絵の「保護」を最優先課題のひとつとして掲げている。ナスカ台地は近年、無許可の車両による踏み荒らしや開発による侵食が問題視されており、発見と保護は切り離せない課題となっている。絵の存在を明らかにすることが、同時にその絵を危険にさらすリスクも孕んでいるのだ。

古代の人々がなぜ、誰にも見えない高さから見なければ意味をなさない絵を、砂漠に刻み続けたのか。その問いは今も宙に浮いたまま、台地の上に静かに広がっている。168点の新発見は、謎を解く手がかりになるのか、それとも謎をより深くするだけなのか——答えはまだ、砂の下にあるのかもしれない。

取材・出典

関連するストーリー