ストーンヘンジの「祭壇石」はスコットランドから運ばれていた
近年の地質分析によって、ストーンヘンジの中心に据えられた巨石が、はるか800km北方から運ばれた可能性が浮上した。
中心に眠る一枚の石が語り始めた
ストーンヘンジといえば、円形に立ち並ぶ巨大な門型の石組みが真っ先に思い浮かぶ。だが長年、研究者たちが注目してきたのは、その円の中心付近に横たわる一枚の平石だ。「祭壇石」と呼ばれるこの石は、長さ約5メートル、重さは推定6トン近いとされる。祭壇として使われたのか、もともと直立していたのかすら、まだ定かではない。
アベリストウィス大学などの研究チームが近年実施した地質分析によって、この祭壇石の鉱物組成が注目を集めた。分析の結果、石の成分がウェールズや近隣地域の岩盤とは一致せず、スコットランド北東部の地層に近いとされる組成を示したという。もしそれが正しければ、石は800キロメートル以上を移動してきた計算になる。なぜそこまでして、その石でなければならなかったのか。
「ブルーストーン」問題と運搬の謎
ストーンヘンジの石は大きく二種類に分けられる。外縁の巨大なサーセン石と、内側に配置された比較的小ぶりな「ブルーストーン」だ。ブルーストーンについては20世紀半ば以降の研究で、約280キロメートル離れたウェールズ西部・プレセリ丘陵が産地と特定されている。陸路と海路を組み合わせた運搬経路も、地形から複数の説が提唱されてきた。
しかし祭壇石の産地が本当にスコットランドであれば、これはブルーストーンの問題をはるかに超える。当時の技術でどうやって運んだのか、どれほどの人数が動員されたのか、そもそも誰がその必要性を決定したのか。すべてが謎のまま積み重なる。建設が始まったのは今から約5000年前とされ、その後も数百年かけて段階的に改修されたと考えられている。つまりストーンヘンジは一世代の人間が完成させたものではなく、複数の世代にわたる「継続的な意志」の産物だ。
謎が解けるほど、問いが深まる
近年の研究は確かに前進している。石の産地が特定されつつあり、周辺から見つかった埋葬跡の分析から、ストーンヘンジが単なる天文台や儀式場だけでなく、広域から人々が集まる「聖地」として機能していた可能性も高まっている。骨の同位体分析からは、遠く離れた地域出身の人物が埋葬されていたことも示唆されているという。
それでも核心的な問いは残る。なぜ、よりにもよってあの場所なのか。なぜその石でなければならなかったのか。5000年前の人々の信仰や動機を、現代の分析手法が完全に言語化できる日は来るのだろうか。地道な研究の積み重ねが謎を溶かすたびに、その奥にまた新しい問いが現れる。ストーンヘンジとはそういう場所なのかもしれない。