「幻の都市」が現実になる日――考古学が塗り替える世界地図
長年「伝説」とされてきた古代都市が、近年の調査技術の進歩によって実在の可能性を帯び始めている。歴史の常識はいかにして更新されるのか。
「ない」と断言されていた場所で、遺構が見つかった
かつての教科書には、こう書かれていた。アマゾンのジャングルは土壌が貧しく、大規模な文明を支えることはできない、と。ところが近年、航空レーザー測量(LiDAR)技術の普及により、密林の樹冠の下に幾何学的な構造物が眠っていることが確認されるようになった。「あるはずがない」という前提が、静かに、しかし確実に崩れ始めている。
歴史上、人々は繰り返し「幻の都市」を追い求めてきた。黄金で満たされた都市、聖なる楽土、英雄王が治める王国――。それらの多くは長い間、神話や民間伝承の産物として片付けられてきた。だが、伝説には往々にして、何らかの現実的な核が潜んでいる。
探索者たちが命を賭けた場所
20世紀初頭、ある英国人探検家がアマゾン奥地に向けて旅立ち、そのまま消息を絶った。彼が追い求めていたのは、地図にも記録にも存在しない都市の痕跡だった。当時の学術界は彼の仮説を荒唐無稽と笑ったが、その後の発掘調査で、アマゾン流域にかつて相当規模の定住社会が存在していた可能性が浮上した。皮肉なことに、彼の直感は時代を数十年先取りしていたかもしれない。
一方、アンデスからメソアメリカにかけての地域では、黄金と豊穣の王にまつわる伝承が複数の先住民文化に共通して見られる。「黄金の筏」と呼ばれる儀式の記録物がボゴタの博物館に収蔵されており、湖に黄金を捧げる儀式が実際に行われていたことは確認されている。都市そのものの規模や場所については、いまも諸説が入り乱れており、確定的な結論は出ていない。
伝説は「嘘」ではなく「記憶」かもしれない
シャンバラやアズトランといった伝説の地は、宗教的・精神的な文脈で語られることが多く、物理的な遺跡との対応を証明するのは難しい。しかし研究者の中には、こうした伝承が実際の地名・地形・歴史的事件を象徴的に変容させたものではないかと考える者もいる。キャメロットに至っては、英国各地に「本物の所在地」を主張する場所が複数存在しており、伝説と史実の境界線は今も曖昧なままだ。
考古学の歴史は、「ない」が「あった」に変わる連続でもある。シュリーマンがトロイアを発掘したとき、世界は驚嘆した。現代の技術が次に何を地表の下から引き出すのか、誰にも分からない。私たちが「神話」と呼んでいるものの中に、まだ見ぬ現実が眠っている可能性を、完全には否定できないのではないだろうか。